ここに一枚の写真がある。
5年ほど前のクソ寒い冬の日、弊社の事務所に集まった怪しい男たち。その会議は夜7時に始まり、酒を酌み交わしながら夜通し行われた。

「エンシュージアスト・バイカーズミーティング」。

自分が発起人となったフリーペーパー「エンシュージアストマガジン」も年に1回の発行ながら今年で無事第5号を数えることになった。そもそもそんな手間暇のかかるアナログな冊子を作ろうと思ったきっかけは、「バイクのふるさと」とも言われる遠州地域なのに、作り手と乗り手、あるいはバイク乗り同士でコミュニケーションを取り合えるツールがなかったこと。ではせめて双方の思いや情報などを掲載し、イベントなどを通じて入手できるフリーペーパーを発行してみてはどうだろう、という思いからだった。しかし、いざ作ろうと思っても、弊社スタッフだけではコンテンツがすべて揃わない。そこでまずは知り合いであるバイク乗りに声をかけ、本音で言いたいことを語りあい、その中からヒントをもらおう、となったのだ。
それにしてもヘヴィーデューティーな面々である。窓の外は冬なのに、集まった男たちの暑苦しい顔・・・ではなく、熱い思いだけで、暖房もいらないぐらいの状態だった。中にはマトモな人もいるが、ヒゲ&スキンヘッド率の高さは否めない。ちなみに両サイドにいる帽子を被ったふたりのおじさんもパーフェクトスキンである。それはさておき、この会議に議事録は存在しないので、実際のところどんなコンテンツにカタチを変えたのかは、正直覚えていない。しかしバイクを愛する者たちの思いはハッキリと伝わったし、創刊に向けて拍車がかかったのは間違いない。

こうして2017年の夏、めでたく「エンシュージアストマガジン」第1号が発行された。「エンシュージアスト」とは、遠州とエンスージアスト(熱中する人)を掛け合わせた造語である。遠州といえば、ご存じホンダ、ヤマハ、スズキのバイクメーカーだけでなく、ヤマハやカワイなどの名だたる楽器メーカーが誕生した地でもあるので、本紙ではバイクだけでなく、音楽や楽器の情報も取り入れることになった。表紙はミーティングにも参加していただいた、遠州を代表するスキンヘッドのひとり、世太郎氏による完全描き下ろしイラスト。浜名湖を背景に、敢えてライラック(以前、浜松に存在していたバイクメーカー)と東海楽器のアルミ鋳造ギター「TALBO」を採用した。弊社スタッフの熱い思いもあってか、地元のバイク関連企業などにも協力いただき、フリーペーパーとしては異例の60ページ(!)という充実した内容となった。
https://enshusiast.com/enshusias-vol-1

続く第2号も前回同様、毎年8月に浜松総合産業展示館で行われるイベント「バイクのふるさと in はままつ」での配布と、各フレンドリーショップへの配本を中心としたカタチでの発行となった。当初、編集長のモチベーションが上がらず、制作を開始するまで時間がかかったが、今回も協力いただいた各メーカーさんや、読者の声を受けて、最終的には創刊号以上の充実した内容になった。表紙は遠州スキンヘッド7人衆のひとり、MOTO-PHOTOを運営するカメラマン、KURUMIYAによるものだ(モデルも本人)。よく見ると遠州ネタがちりばめられている。コンテンツ内容はキャンプミーティングをはじめ、遠州のものづくりや、オーディオ、楽器などの音楽コンテンツも充実させ、読み応え十分な内容となった。https://enshusiast.com/enshusiast%EF%BC%8Fエンシュージアスト-vol-2/

第2号の発行後はホームページやFBページも充実し、「エンシュージアストほったらかしミーティング」なるホットなイベントも開催、概ね好評をいただき、地元では少しずつ認知度も上がり、その勢いで第3号も2019年の夏に無事に発行された。テーマは「ON ANY EVERYDAY〜熱中人でいこう!」。この後にコロナ禍が迫っていることもつゆ知らず、ノリノリだった。表紙は浜松の新進気鋭のアーティスト、バーシーのイラストを採用。バイクや音楽の情報を共有するだけではなく、地域の熱中人そのものをより深く知ってもらおう、という思いも強くなった。

こうやってフレンドリーショップや読者のみなさんの笑顔を見るともうやめられませんね。

そして2020年。新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態により、ここ遠州も様々な自粛が求められるようになってしまった。3月のモーターサイクルショーはもちろん、「バイクのふるさと in はままつ」も早々に中止が決まり、エンシュージアストも目標を失いかけてしまった。それでも編集部は第4号のテーマ通り「好き」を諦めずになんとか第4号の発行に向けて突き進むことになった。夏の配布は断念しても、秋のバイクシーズンに発行を定め、結果的には10月に無事第4号を発行することができた。ピンチがチャンスを生む、というわけではないが、コロナ禍においてバイクの売り上げも伸びたことや、秋に発行することでこれまでできなかった撮影や、アパレル特集といったコンテンツも充実し、実は今までで一番いい内容になったかもしれない。
さて、今年はいよいよ第5号を発行する年である。現時点では大まかなテーマは決まっているが、細かなツメや営業活動はまだまだこれからである。

たかがフリーペーパー、されどフリーペーパー。

多くの仲間が志半ばで廃刊してしまう中、年1回という超スローペースながら、なんとか継続して発行し続けられるのは、やはりどこかに遠州人としてのねばっこい気質みたいなものがあるからなのかも知れない。「何輪かの乗り物と音楽とそれを愛する人々」といった限られた枠の中でもこれだけ雑多なネタが見つけられるのは日本広しといえども遠州だけではないだろうか。
あえて言うなら、いつ大きな地震が来るかもわからない、いつ転倒してケガをするかもわからない。そんなリスクだらけの街でリスクだらけの乗り物に酔う・・・ロックじゃないか。ルーは言った。常にワイルドサイドを歩くんだ、と。それでも好きがゆえに万全の備えをハートに刻みながら・・・。
そう、これからはローカルの時代なのだ。継続は力なり。次回へつづく。

文・フランク雑太(エンシュージアスト発行人)